観光学科のフォーカス
		
		
			
観光体験の本来の力を五官で取り戻す
		
		研究者、現場で語る。
		
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					- 橋本 俊哉 観光学科 教授
- Hashimoto Toshiya
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							- Profile
- 立教大学社会学部観光学科卒業、立教大学大学院社会学研究科応用社会学専攻博士前期課程修了、東京工業大学大学院理工学研究科社会工学専攻博士課程修了。博士(工学)。1995年より本学勤務。
 
 
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				 私たちが訪問地域の文化や美しい自然に接するとき、五官を通して知覚された情報が統合することで、過去の体験と重ね合わせた〝なつかしさ”の感情が呼び起こされたり、新たな体験に心が揺さぶられたりします。観光の場面では、日常生活のしがらみから解放され、さまざまな体験を通して五官の感度も高まります。五官が活性化すればイマジネーションも豊かになり、体験内容も印象深く記憶に刻まれます。観光は「五官センサー」を駆使することで私たちの心身を刺激し、活力を与えてくれるものなのです。
 ところが近年は、SNS の急速な普及に呼応して、観光地側が「写真や動画で紹介されること」を意識するようになってきています。これは興味深い現象ですが、写真や動画を「記録」して発信することに過度に注意が向けられると、観光地を訪問しても、そこでの体験が「記憶」に深く刻まれることは難しくなってしまうでしょう。
 観光体験がもつ本来の力を取り戻すにはどうしたらよいのでしょうか。私は、視覚以外の感覚の中で、とりわけ嗅覚が果たす役割に注目しています。例えば、箱根の代表的な観光スポットであるここ大涌谷では、その独特な景観とともに、まさに実際にここに来なければ体感できない大地の発するにおいが記憶に刻まれることでしょう。嗅覚は曖昧ですが他の感覚以上に記憶や感情と密接に結びついています。そのため観光者が印象深い体験を「記憶」するうえで重要であるものの、ほとんど研究されてきませんでした。「スメルスケープ」と呼ばれる嗅覚の果たす役割の研究によって、観光者の体験をより印象深いものにするヒントが得られ、「人生を豊かにする」という観光の本質的な意義に接近できると考えています。
 新型コロナウイルスの影響で急速に進んだオンラインでは体験しえない感覚にこそ、観光の醍醐味があるのです。
				観光学科
 
	
		
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観光学科のフォーカス
				
				
					
地域社会×インバウンド
				
				急増する外国人観光客との
共生を模索する
				
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							- 韓 志昊 観光学科 教授
- Han Jiho
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									- Profile
- 韓国外国語大学卒業。立教大学大学院観光学研究科博士前期課程、Virginia Polytechnic Institute & State University College of Management 博士課程修了。立命館アジア太平洋大学准教授を経て、現在観光学部観光学科教授。Ph.D. in Hospitality and Tourism Management。主な論文に'Identifying Leisure Travel Market Segments Based on Preference for Novelty'(共著)in Journal of Travel and Tourism Marketing, Vol. 26 (5&6), 2009.
 
 
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						最近、日本のスキー場や温泉地を訪れる外国人観光客に関する話題をよく耳にします。私が研究のフィールドにしている長野県野沢温泉村は、オーストラリアからのスキー客が「長期の夏休み」を過ごす人気のデスティネーションとなっています。またここ数年は、オーストラリア以外からも観光客が増加しています。
 当初はプライベートでスキーを楽しんでいたのですが、ゲレンデや温泉で外国人スキー客が急速に増えていることに興味を持ち、ゼミのテーマとして調査を始めました。すると、パウダースノーに惹かれて日本のスキー場を訪れているなか、特に野沢温泉村にリピーターとして訪れている外国人は、伝統的な町並みや海外では珍しい温泉を楽しめることにも魅力を感じていることが分かりました。
 一方で、外国人スキー客が増加したことにより、外国人による観光ビジネスや移住する外国人も予想外に急増し、これまで見られなかった課題が地域社会に発生しています。現在は、私のゼミに所属する学生たちと一緒に野沢温泉村でフィールドワークを行い(右上の写真は現地を訪れたゼミ生たちです)、野沢温泉村における観光の現状を継続して分析しています。
						インバウンドに関する研究を進めることで、外国人観光客や外国人住民と地域住民が、観光地において共生する可能性を模索するとともに、インバウンド誘致に取り組んでいる日本各地の観光地に対して、有益なヒントを示すことができると考えています。
 ゼミのほかに、私は観光学科で「観光特論(英語)」という講義を担当しています。この授業では、観光に関する専門用語や基礎概念を英語で学習しつつ、観光について英語で書かれた新聞記事や論文を読み進めていきます。それにより、観光を分析し研究するためのツールとしての英語の必要性と活用方法について学びます。
						観光学科