活動の報告
<受験情報ページCLIP掲載>観光学科西川ゼミのコロナの影響下での活動をご紹介します
新型コロナウイルス感染の拡大により、大学の授業も大きな影響を受けています。そんな中でも観光学部の学生が学ぶ姿を、観光学科の西川亮助教のゼミの活動にフォーカスを当ててご紹介します。
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西川ゼミでは、観光客が訪問する地域をベースに観光を考えることを大切にしています。昨今、SDGsをはじめとして、持続可能性の重要性が 叫ばれていますが、少子高齢化社会に入った今、地域が将来にわたって持続できるために「観光」はどのように貢献できるのか考える必要があります。地域の持続性には、経済のみが活性化すればいいわけではありません。その地域に居住する住民の住環境が維持できることや地域の個性である地域資源が守られていくことも重要です。それを実現するために行政の政策や住民によるまちづくり、民間企業による事業はどうあるべきでしょうか、何をすべきでしょうか。
例えば、歴史的な街並みで有名な地域には観光客がたくさん訪れますが、そこには住民の生活があり、観光客の来訪によって生活環境が脅かされているかもしれません。観光は必ずしも地域にとってプラスであるとは限らないということを理解した上で、観光のあり方を考えることが大切です。ゼミでは、数々の文献を読み込み基本的な知識を理解したら、地域で実際に起きていることから学ぶ姿勢を貫いています。埼玉県川越市や千葉県野田市など具体的な地域で、行政や地域にお住いの方、事業者の方々と連携しながら、観光まちづくりに関わらせていただき、地域からの学びを大切にしています。
<写真①> <写真②>
武蔵野銀行の支援を受けて川越のまちあるきマップを作成するプロセスで社会実験を実施。川越の歴史文化観光をどのようにリ・デザインできるか、学生の目線で地域資源の魅力を感じ、マップを通じて伝えたい(2020年11月撮影)。
一方、2020年春に始まる新型コロナウイルス感染症の流行は、私たちの旅行・観光に対する意識や行動を大きく変えることとなりました。時代が大きく変わろうとしている今、ゼミでは大学生の観光に対する意識変化を把握する調査を実施し、観光関係者にオンラインで発表をしました。コロナ禍で移動が制限される今だからこそ地元を見直すきっかけとしての「地元観光」が求められるのではないか、という議論をゼミで行い、それをコロナ禍の一時的なものに留めるのではなく、いかにして定着していけるだろうかということを考えています。また、この調査では、コロナ禍で観光を学ぶモチベーションについても尋ねています。印象的だったのは、観光を学ぶ意欲が高まった比率が高かったこと。例えば、次のような自由記述がありました。
“私たち観光学部生はこんな状況を打開できる専門知識やノウハウを有している、将来に必要な人材だと認識している。現在の苦しい状態を乗り越える力量をつけられたら、今後の観光の糧になるのではないかと、自分ごとのように考えるようになった。”
“観光は人との関わりで成りたっていると改めて感じた。コロナを通じて、より観光の弱みが浮き彫りになったのでそこから新しい学びを得ることができそう。”
<図①> <図②> <図③>
2020年7月に公表した「新型コロナウイルス流行による学生の旅行意識への影響に関するレポート」より抜粋。ゼミ時間外も相当な時間を使ってディスカッションをして完成した。(クリックで拡大します)
そのほか、より多くの地域の特徴を知るために、月に1回程度のペースで週末を使って町歩きを実施したり、地方で活躍する方をゲストにお呼びしてゲストトークを実施したり、難解な学術論文発表会に参加したり、夏休みは有志のチームを組んで「観光まちづくりコンテスト」にチャレンジするなど、ゼミを大学生活の中心として充実した日々を送っています。
<写真③> <写真④> <写真⑤>
写真③:ようやく実施できたまちあるき(草加市)。詳細な地図を見ながら街の空間特性を把握していく(2020年10月撮影)。
写真④⑤:金沢でのゼミ合宿では、ガイドさんに話を聞いたり、論文の精読を行うなどした(2019年9月撮影)。
新型コロナウイルス流行による観光の低迷は、確かに社会に大きな影響を与えています。しかし、そういう今だからこそ改めて観光の持つ力を再確認する必要があるでしょう。ゼミの学生は、今の状況だからこそ観光を専門に学ぶ自分たちにできることがあるのではないか、という前向きな意識に切り替えるようになっています。オンライン上では議論が数時間白熱し、深夜になることもしばしば…。最近は教員抜きでの学生のみによる自主的なディスカッションも増えています。
新型コロナウイルス感染症の流行は、光を照らすはずの観光に暗い影を落とすようにも見えます。しかし、ここから旅行・観光に関する新たな価値観を創出していこうとする学生の姿勢に、一筋の光を見いだせるように感じています。